時々考えてしまうこと
卒業公演の稽古も、いよいよ佳境になってまいりました。
私も皆も、文字通り己の身を削っております。
その姿は、さながら特攻兵のよう。
大丈夫か。
千秋楽終えたら皆ばったばった倒れていくんじゃないのか…………
既に私含め何人か倒れて復活してるんで、心配しつつも褌をしめてかかる日々です。
実際に毎日しめてんのは帯とか袴とかだけどな。
なんちゃって。
さて、こんなふうに、役者ってのは体力勝負なんだなぁと日々痛感してます。
心だけが動いても、体が動かなければ何にも伝わらない。
双方が動いて、初めて己の身は芸術品となるんだと。
そして、役者になるには、私の体はあまりにもジャンク品だと。
幼少の頃からの虚弱体質、
ヘルニアの一歩手前と診断されたことがあるほどの腰痛、
併行して痛くなる膝、
雨の日に下りやすくなる腹、
重い時にはとことん重くなる生理、
ふいにやってくる目眩と頭痛と内臓痛(肺とか腸の辺りとか)、
眠りたいのに眠れない日、
等々、なんかもう色々とやばいもんを抱えすぎてます。
これが蠱毒だったらめっちゃくちゃすごいものが出来上がる気がする。
蠱毒ってのは、壺の中とかに虫とか蛇とかを入れて競い合わせ、たった一匹残った勝者が、強力な呪術に用いられるほどのやばいもんになるっていう、常人が手を出しちゃいけないやつですが。
ちょっと一回自分の身体をかっ捌いて、どんなもんがあるのか見てみたいもんです。
身体の不調のバトルロワイヤル状態ですもん、今。
きっと、一滴飲んだら死ぬような毒薬が内臓の中とかにありそう。
こんな状態では、役者どころか、人間として生きていくのも厳しいんじゃないかって、たまに思ってしまいます。
勿論、私よりも大変な状況で私より頑張ってる人がたくさんいることは重々承知です。
甘ったれんなってよく言われるし、
かかりつけの病院で「異常なし、つまり気のせい」て診断をされることもありましたし、その日の晩は一人でこっそり大泣きしました。
(余談ですが、冷たい態度で診察するお医者さん最近増えてません?単に私の近所の病院数件が酷いだけなのかな)
でも、
でもね。
苦しみは、しょせん、苦しんでる本人にしか分からないのです。
それを、「根性出せ」とか「甘ったれんな」とか、外野がごちゃごちゃ言うんじゃないよって思うんですよ私は。
日本だけかもしれないけれど、世の中ってそういうところあるから嫌いです。
Twitterで、たまに誰かのこういう不満がバズりますが。
皆、心のどこかでこういう不満を持ってるってことでしょう?
だからRTとかするんでしょう?
中には「物申す」て感じで批判RTする人もいるけれど。
皆同じ気持ちのはずなのに、一向に世間は優しくならない。
なんだかなぁ…………て時々もやもやするんです。
「病は気から」って言葉あるけど、逆パターンもあるんやで。
むしろ、身体の不調がどんどん精神を蝕むんやで。
そして、各個人によって効果のある労い方は全然違うから、他人がなんとか出来るものじゃないんやで。
でも、「俺が一喝入れてやろう」とか、そんなことは絶対あかん。
叩いて直るのは電化製品とかの無機物だけやで。
苦しむ本人が一番望んでるのは、自分の苦しみが無くなること。
だから、拠り所がなくなった人が変な新興宗教にのめり込んだりしちゃうのかなぁと、たまに考えます。
本当に、お医者さんにはどうか患者を機械的に冷たくあしらわず、親身になって話を聞いてほしいものです。
覚えてなさいよ某内科様。(←すんごい根に持ってる)
苦しむ人に対して何も出来ないけれど、
でも、私も苦しんでる人間だからこそ、それでも手を差しのべることくらいはしたいのです。
そのために芸術はあるのかなって、考えてます。
芸術って、己の中にある何かを吐き出すものだから。
それは理想だったり、不満だったり、とある感情だったりする。
虚構の中の登場人物に、共感したりしなかったりして、私達は心を動かされる。
まぁこれは私だけの考えではなくて、今お世話になっている演出家さんのとある一言から解釈を展開させたようなものなのですが……
芸術がすごいのは、それだけじゃない。
一部が心にこびりついて、生き方に影響を与えたりすることもある。
そんな大層なことはないっていう人にだって、
「あの小説家が今度新作を出す」
「あの役者が出る舞台が、来年にある」
てウキウキワクワクした経験はきっとあるはず。
芸術に携わる人間がいることが、誰かの活力源になる。
それってとってもすごいことだと思うんです。
色々述べたけど、
私は誰かの活力源になれるほどの大層な人間だとはこれっぽっちも思ってないです。
どうせ生きるしかないのなら、毎日楽しい方がいいのだから、やりたいことをやりまくってるだけです。
その「やりたいこと」が、演劇だったり小説や絵をかいたりすることである「創作」に、たまたまなっているだけです。
でもね。
私がやりたくてやってることが、いずれは誰かの心を動かせるほどの凄いものになり、誰かの活力源になれたのだとしたら。
これほど嬉しくてwin-winなことはあんまりないんじゃないですか?
そんな野望を心のどこかに隠してはいます。
今も蠱毒状態になってる身体の不調が私を蝕みつつありますが、
芸術とはつまり身を削ること。
死なない程度に、自分のペースで頑張っていきたいと思います。
最後に、ささやかな願いを。
どうか、芸術に関わる人々を、世間が白い目で見ることがなくなりますように。